2015年 02月 13日
タイクライミングツアー・Part3(MUSIC編)
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【タイクライミングツアー・Part3】
(MUSIC編)
今回のタイツアー、もちろん目的はクライミングだったのだけれど、それ以外にも料理人でミュージシャンである僕にとって、料理と音楽というものは旅の中での非常に重要なアイテムだ。
これまでの旅と同様に、クライミングのレスト日の合間を使って、現地の演奏家たちといろいろ交流してきた。
まずクラビの夜の街を飲み歩いていると、ウイークエンドマーケットのすぐそばでライブ演奏をしている店があったので早速入ってみた。
AOD BARというこのお店、ミュージシャンが放つ独特のオーラが放出されていて、入る前からピンとくるものがあった。
店の中ではアイリッシュフォークやブルーグラスのようなアコースティックな演奏が行われていたが、どこか少しアジアンな雰囲気も伝わるような音楽。
聞く所によると、演奏している音楽は、名前は忘れたのだがアイリッシュフォークやカントリーミュージックをルーツに持つが、そこにアメリカインディアンの伝統音楽とタイ、マレーシアの伝統音楽が融合して、南タイと北マレーシアの国境付近で発生した音楽らしい。
使われている楽器もフィドルやマンドリン、アコースティックギターなどカントリーやフォークに使うような楽器とタイの民族打楽器などで演奏される。
写真のフィドルを演奏しているのはパーカッションを演奏しているお父さんの高校生の娘さんで、彼女が思いつくままにどんどんいろんなメロディーを演奏してゆくのにみんなが合わせる、という形で演奏が進んでいた。
お客さんもほとんどがミュージシャンで、客席と演奏者がころころ入れ替わりながらの演奏、とても家庭的な心癒される音楽空間だった。
その後、しばらくはハードな課題に打ち込む日々が続いたが、(その1・2)で書いたような成果がある程度得られたので、体の疲れを取るのと気分転換を兼ねて3日間のレストを取り、カオラック・プーケットに小旅行に出かけた。
まずはカオラックで仲間のPitakとAiの夫婦が経営しているHAPPY SNAPPERというクラブを訪ねた。
店主のPitakはベーシスト。
彼がまだバンコクのクラブシーンでバリバリ演奏していた頃からの仲間で、20年来の付き合いになる。
タイの超有名ロックバンド”THE SUN"のベーシストとしても名が知られている。
突然のアポ無し訪問に彼らはたいそう驚いていたが、数年ぶりが嘘のようでそれまでの時間が止まっていたような再会だった。
もちろんgigが楽しかったのは言うまでもないが、彼らとは地震や津波という共通のアクシデントをこの場で共有してきた経緯があるので、ここでこうしてまた一緒に飲むということは非常に感慨深い出来事だった。
その翌日はプーケットに向かった。
カオラックのHAPPY SNAPPERで津波が来るあの日の前夜まで、Pitakと演奏していたドラマーのGoffが今はプーケットに移っていて、その日カロンビーチのアイリッシュパブでgigがあるから来いよ・・・と連絡を受けていた。
Goffとは津波の3週間前にHAPPY SNAPPERで会って以来の仲間だ。
その時僕はプーケットで行われたトライアスロンのレースに出場して、その後にPitakの店に行って彼に出会った。
実はこの時、僕は新潟の長岡で中越地震に被災した直後だった。
長岡の街自体、地震からの復興はまだ始まったばかりで、それどころか大きな余震がまだ続く中、海外でのレースに行くことをすごく躊躇したが、一緒に出場する仲間が初めてトライアスロンに挑戦するためこの1年間、コツコツと練習を積んできたことを考え、思い切ってプーケットにやってきた。
この時、HAPPY SNAPPERで出会った人々はテレビのニュースなどで中越地震の様子を詳しく知っていて、みんなから大変だったね・・と言葉をかけられた。
しかしその直後、今度は津波が彼らを襲った。
PitakやGoffは奇跡的に九死に一生を得たが、その時店にいた人の何人かは未だに消息不明だという。
Goffとはその後もSNSで連絡を取り続けていたが、実際に会うのはその時以来の10年ぶりだった。
この日の彼の出演バンドは"The Bangkok Traveller"
ポリスやスティングの曲を中心に素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
gigの途中でGoffがステージに上がれ・・と誘ってくれたが、この日は昼間っから飲み続けのヘロヘロの酔っ払いで、とてもまともにベースなど弾ける状態ではなかったので、セッション乱入は残念ながら遠慮した。
そしてこの時、バンコクの友達・シンガーのAppleが僕と入れ違いでナント!クラビに来ていた。
翌朝ミニバスで早速クラビに戻り、彼女に連絡を入れると、今夜クラビでgigがあるということだ。
Gigはクラビ川沿いのおしゃれなカフェで行われた。
夕方になるのを待って、サクラツアーのゆかこねーさんとそのカフェに行ってみた。
ついでにそこで夕食を取ってしばし待つとgigが始まった。
今回、Appleは他の二人のシンガーとツアーに来ており、どうやらその二人がリリースしたCDの販売促進ツアーに応援で同行しているようだった。
演奏はカラオケでの判奏だったが彼女の歌はやっぱり素晴らしかった。
彼女は以前、前述のPitakと同じバンド"Power House"で活躍していた時からの仲間で、この後バンコクで会う彼女の旦那でドラマーのBobもそのバンドのメンバーだった。
みんな20年来の仲間たちだ。
そしてカオラックでPitakから友達がクラビで楽器屋をやっているから顔を出してみて・・と言われていたのでその店に行ってみた。
Smart Musicという楽器屋さん。
Kwanというベーシストがその店を経営していた。
先日PitakからHiroっていう日本人のベーシストが訪ねていくからよろしく・・・って電話があったので待っていた・・・とのことだった。
彼の楽器屋さんはかなり本格的で、楽器の品揃えも多く、個人レッスンやバンドセッションが出来るスタジオも完備している素晴らしいお店だった。
しばらくスタジオでセッションしながらのベース談義はとても楽しかった。
クラビでの全てのスケジュールが終わってバンコクへ。
バンコクではタイで最後の2泊3日の予定だった。
残念ながらこの時Appleのgigは全く無かったのだが、帰国前日になって、今夜旦那のgigがあるよ!・・・とAppleから連絡が入った。
場所はカオサンにあるブルースバー。
教えられた場所に行ってみると、なかなかに渋~い店だ。
しばらく飲んでいるとこれまた年期の入ったオッサンがソロで渋~いアコースティックのブルースを演奏し始めた。
酔いも眠気もピークに達した頃、ようやくBobたちが現れた。
頭の中に霞が掛かり始めた頃、心地よい演奏が始まった。
ミュージシャンなら誰もが知っているような簡単なR&Bのナンバーばかりなのだが、恐ろしく切れるドラムのただならぬグルーヴを聴きながら、30日に渡るタイツアーの最後の夜にふさわしいgigだなあ・・・とぼんやり思っていた。
早く日本に帰って思いっきりベースが弾きたいと思った。
そしてまたタイに来ようと思った。
(MUSIC編)
今回のタイツアー、もちろん目的はクライミングだったのだけれど、それ以外にも料理人でミュージシャンである僕にとって、料理と音楽というものは旅の中での非常に重要なアイテムだ。
これまでの旅と同様に、クライミングのレスト日の合間を使って、現地の演奏家たちといろいろ交流してきた。
まずクラビの夜の街を飲み歩いていると、ウイークエンドマーケットのすぐそばでライブ演奏をしている店があったので早速入ってみた。
AOD BARというこのお店、ミュージシャンが放つ独特のオーラが放出されていて、入る前からピンとくるものがあった。
店の中ではアイリッシュフォークやブルーグラスのようなアコースティックな演奏が行われていたが、どこか少しアジアンな雰囲気も伝わるような音楽。
聞く所によると、演奏している音楽は、名前は忘れたのだがアイリッシュフォークやカントリーミュージックをルーツに持つが、そこにアメリカインディアンの伝統音楽とタイ、マレーシアの伝統音楽が融合して、南タイと北マレーシアの国境付近で発生した音楽らしい。
使われている楽器もフィドルやマンドリン、アコースティックギターなどカントリーやフォークに使うような楽器とタイの民族打楽器などで演奏される。
写真のフィドルを演奏しているのはパーカッションを演奏しているお父さんの高校生の娘さんで、彼女が思いつくままにどんどんいろんなメロディーを演奏してゆくのにみんなが合わせる、という形で演奏が進んでいた。
お客さんもほとんどがミュージシャンで、客席と演奏者がころころ入れ替わりながらの演奏、とても家庭的な心癒される音楽空間だった。
その後、しばらくはハードな課題に打ち込む日々が続いたが、(その1・2)で書いたような成果がある程度得られたので、体の疲れを取るのと気分転換を兼ねて3日間のレストを取り、カオラック・プーケットに小旅行に出かけた。
まずはカオラックで仲間のPitakとAiの夫婦が経営しているHAPPY SNAPPERというクラブを訪ねた。
店主のPitakはベーシスト。
彼がまだバンコクのクラブシーンでバリバリ演奏していた頃からの仲間で、20年来の付き合いになる。
タイの超有名ロックバンド”THE SUN"のベーシストとしても名が知られている。
突然のアポ無し訪問に彼らはたいそう驚いていたが、数年ぶりが嘘のようでそれまでの時間が止まっていたような再会だった。
もちろんgigが楽しかったのは言うまでもないが、彼らとは地震や津波という共通のアクシデントをこの場で共有してきた経緯があるので、ここでこうしてまた一緒に飲むということは非常に感慨深い出来事だった。
その翌日はプーケットに向かった。
カオラックのHAPPY SNAPPERで津波が来るあの日の前夜まで、Pitakと演奏していたドラマーのGoffが今はプーケットに移っていて、その日カロンビーチのアイリッシュパブでgigがあるから来いよ・・・と連絡を受けていた。
Goffとは津波の3週間前にHAPPY SNAPPERで会って以来の仲間だ。
その時僕はプーケットで行われたトライアスロンのレースに出場して、その後にPitakの店に行って彼に出会った。
実はこの時、僕は新潟の長岡で中越地震に被災した直後だった。
長岡の街自体、地震からの復興はまだ始まったばかりで、それどころか大きな余震がまだ続く中、海外でのレースに行くことをすごく躊躇したが、一緒に出場する仲間が初めてトライアスロンに挑戦するためこの1年間、コツコツと練習を積んできたことを考え、思い切ってプーケットにやってきた。
この時、HAPPY SNAPPERで出会った人々はテレビのニュースなどで中越地震の様子を詳しく知っていて、みんなから大変だったね・・と言葉をかけられた。
しかしその直後、今度は津波が彼らを襲った。
PitakやGoffは奇跡的に九死に一生を得たが、その時店にいた人の何人かは未だに消息不明だという。
Goffとはその後もSNSで連絡を取り続けていたが、実際に会うのはその時以来の10年ぶりだった。
この日の彼の出演バンドは"The Bangkok Traveller"
ポリスやスティングの曲を中心に素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
gigの途中でGoffがステージに上がれ・・と誘ってくれたが、この日は昼間っから飲み続けのヘロヘロの酔っ払いで、とてもまともにベースなど弾ける状態ではなかったので、セッション乱入は残念ながら遠慮した。
そしてこの時、バンコクの友達・シンガーのAppleが僕と入れ違いでナント!クラビに来ていた。
翌朝ミニバスで早速クラビに戻り、彼女に連絡を入れると、今夜クラビでgigがあるということだ。
Gigはクラビ川沿いのおしゃれなカフェで行われた。
夕方になるのを待って、サクラツアーのゆかこねーさんとそのカフェに行ってみた。
ついでにそこで夕食を取ってしばし待つとgigが始まった。
今回、Appleは他の二人のシンガーとツアーに来ており、どうやらその二人がリリースしたCDの販売促進ツアーに応援で同行しているようだった。
演奏はカラオケでの判奏だったが彼女の歌はやっぱり素晴らしかった。
彼女は以前、前述のPitakと同じバンド"Power House"で活躍していた時からの仲間で、この後バンコクで会う彼女の旦那でドラマーのBobもそのバンドのメンバーだった。
みんな20年来の仲間たちだ。
そしてカオラックでPitakから友達がクラビで楽器屋をやっているから顔を出してみて・・と言われていたのでその店に行ってみた。
Smart Musicという楽器屋さん。
Kwanというベーシストがその店を経営していた。
先日PitakからHiroっていう日本人のベーシストが訪ねていくからよろしく・・・って電話があったので待っていた・・・とのことだった。
彼の楽器屋さんはかなり本格的で、楽器の品揃えも多く、個人レッスンやバンドセッションが出来るスタジオも完備している素晴らしいお店だった。
しばらくスタジオでセッションしながらのベース談義はとても楽しかった。
クラビでの全てのスケジュールが終わってバンコクへ。
バンコクではタイで最後の2泊3日の予定だった。
残念ながらこの時Appleのgigは全く無かったのだが、帰国前日になって、今夜旦那のgigがあるよ!・・・とAppleから連絡が入った。
場所はカオサンにあるブルースバー。
教えられた場所に行ってみると、なかなかに渋~い店だ。
しばらく飲んでいるとこれまた年期の入ったオッサンがソロで渋~いアコースティックのブルースを演奏し始めた。
酔いも眠気もピークに達した頃、ようやくBobたちが現れた。
頭の中に霞が掛かり始めた頃、心地よい演奏が始まった。
ミュージシャンなら誰もが知っているような簡単なR&Bのナンバーばかりなのだが、恐ろしく切れるドラムのただならぬグルーヴを聴きながら、30日に渡るタイツアーの最後の夜にふさわしいgigだなあ・・・とぼんやり思っていた。
早く日本に帰って思いっきりベースが弾きたいと思った。
そしてまたタイに来ようと思った。
by onsite63
| 2015-02-13 12:11
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